02年記録

2002年活動状況

2002年12月5日
「低料第三種郵便物制度の存続」で片山総務大臣に再度「要望書」を提出

「JDA・全国ネットワーク」は、2002年2月6日付けで、片山総務大臣宛に「低料第三種郵便物制度の存続」に関する「要望書」を提出しているが、さる12月日、再度同趣旨の要望書を提出することになった。
これは、今年度(2003年4月)に発足する郵政公社が、民営化の流れの中で事業運営することになり、社会政策的な視点での「低料第三種郵便物制度の存続」に影響を与える危険性がある、という認識から行ったものである。
当日、片山大臣は、国会審議のため不在となり、急遽、團 宏明郵政企画管理局長に、大臣宛の要望書を託すことになった。当ネットワークも、荻野会長が急に入院することになり(現在すでに退院している)、伊東弘泰専務理事が会長代行として、他の役員を含めた10名で、團局長にお会いして「要望書」を手渡した。

「要望書」の趣旨は、「低料第三種郵便物制度の存続」が、①障害当事者団体の維持・存続」に必要不可欠であること、②障害者一人ひとりの「社会参加と日々の生活のQOLの維持・向上」の生命線にもなっており、2003年4月の郵政公社発足後も、この制度を堅持してもらいたい、というものである。
具体的には、2002年7月に成立した日本郵政公社法案および日本郵政公社法施行法案の下記の「付帯決議」を遵守してほしい、という内容である。

●付帯決議の内容
「総務省および日本郵政公社は、郵政法第26条第2号及び第3号の盲人用郵便物について、無料の取り扱いとするとともに、心身障害者のための政策的軽減料金の維持に特に配慮すべきこと。」
この「要望書」の要点について、伊東専務理事より説明し、続いて当日出席した妻屋常務理事、熊本常務理事、大濱常務理事、長谷川常務理事、新田常務理事の各氏からも、それぞれ「低料第三種郵便物制度の存続」の必要性と重要性を強調した。この当会の「要望書」について、團局長は、「個別の料金体系については、原則的には郵政公社が決めることである。しかし、“付帯決議”があるわけで、この点を受けて法関連の整備を行っているところだ。この制度が大変大事な制度であることは認識している」と、大変前向きの姿勢を示した。

最後に、伊東専務理事より、次の二点の発言があった。
1.当「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」としては、本来ならばこのような「障害者だから郵便料金を割り引いてほしい」というお願いはすべきではない、と考えている。他の人と同じように料金を払うべきである。ただし、現在障害者が受けている「社会的なハンディ(いわれなき差別)」の中では、“割引”を認めてもらわざるをえないのである。例えば、障害者の生活基盤であるべき「雇用」については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」があって、企業は「1.8%の法定雇用率」を守ることになっている。しかし、現実は、「未達成企業の割合が56.3%」という、信じられないような数字になっているのである。法定雇用率は、単なる“努力義務”に過ぎない。このような社会環境の中で、障害当事者は経済的に困窮しているのである。世界では、すでに45カ国に「障害者差別禁止法」がある。残念ながら、日本
では“大国”にもかかわらず、「障害者差別禁止法」がなく、このような“差別”が横行しているのである。この「いわれなき差別」がなくなるまでは、「特別な配慮」をしていただきたい。

2.また、先の「国会付帯決議」の中に、「心身障害者」という言葉があるが、これは、すでに何年も前に、法律用語としては「障害者」に統一されて(改められて)いるものである。総務省のみの責任というつもりはないが、以後十分な配慮をしてもらいたい。

この指摘に対して、團局長は、「二点のご趣旨は分った。前向きに取り組んでいきたい」との趣旨の発言を得て、総務省との会見を終えた。


2002/11/27
内閣府へ「新しい『障害者基本計画(2003年~2012年)」の策定に関する意見書」を提出

「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」は、昨2001年12月9日(障害者の日)に、障害当事者10団体(末尾追記のとおり)が、日本での「障害者差別禁止法」の実現を目指してスタートした団体です。
私たちは、以来1年間、多角的な検討・調査・研究を重ねた結果、団体としての基本的な考え方を、「障害当事者として“7つの要望”」として、集約しました。そして、この「要望」を実現するためには、現行の「障害者基本法」をベースとする法体系では不可能である。新たに、「障害のある人に対する差別を包括的に禁止し、障害のある人の人間としての権利を確立することを目的とする“障害者差別禁止法”を制定すること」以外に道がない、という結論に達しました。
2003年度にスタートする「新しい障害者基本計画」では、この“障害者差別禁止法”の制定を最優先にすることを、強く要望いたします。

障害当事者としての“7つの要望”

  • 1.障害のある人や児童が、たとえ親が死亡した場合でも、障害のない人と同等に、生涯を全うすることができる社会を実現すること。
  • 2.障害のある人や児童は、その障害によりいかなる差別も受けることなく、統合された環境の中で、「一人ひとりの特別な教育ニーズに基づいた教育」を受けることができる社会を実現すること。
  • 3.障害のある人は、障害のない人と同等に、いかなる差別も受けることなく、働く機会と権利が与えられる社会を実現すること。
  • 4.障害のある人が、地域社会で自立して生活していくための、あらゆるサービス(住宅、交通・移動、各種施設、情報などに関するサービス)が、障害のない人と同等に、いかなる差別も受けることなく提供される社会を実現すること。
  • 5.障害のある人は、障害のない人と同等に、いかなる差別も受けることなく、参政権を行使できるような社会を実現すること。
  • 6.障害のある人は、障害のない人と同等に、いかなる差別も受けることなく、裁判を受け、関連する司法サービスの下、自らの権利を確保することができる社会を実現すること。
  • 7.障害のある人は、障害のない人と同等に、いかなる差別も受けることがないことを保障するために、障害のある人が過半数を占める「障害のある人の権利を守る委員会」を設置すること。

■追記
「障害者差別禁止法(JDA) を実現する全国ネットワーク」の団体名(順不同)

  • 社団法人全国脊髄損傷者連合会
  • 特定非営利活動法人 日本アビリティーズ協会
  • 社団法人日本リウマチ友の会
  • 特定非営利活動法人 日本せきずい基金
  • 日本ALS協会
  • 障害者の生活保障を要求する連絡協議会<障害連>
  • 全国頸髄損傷者連絡会
  • 全国ポリオ会連絡会
  • 特定非営利活動法人 日本国際福祉交流センター
  • 財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金

2002/10/19
NHK、DPI日本会議主催「国際フォーラム」で論じられたこと

「障害者差別禁止法」実現への潮流
■今、なぜ「障害者差別禁止法」なのか

DPI世界会議が、「札幌宣言」を採択して閉幕した翌日の10月19日(土)の午後、日本教育会館一ツ橋ホール(東京)で、NHK厚生文化事業団とDPI日本会議が主催する「“障害者差別禁止法”を考える国際フォーラム」が、開催された。第一部の、池原毅和・弁護士(東京アドボカシー法律事務所)によるガイダンス講演「ADA法と世界の差別禁止法の潮流」、テレジア・デグナー氏(ドイツ, Bochum応用科学大学教授)による講演「障害者差別禁止法の国際比較」、メアリー・ルー・ブレスリン氏による講演「ADA法制定運動の軌跡と未来への挑戦」に引き続き、第二部のパネルデスカッション「今、障害者差別禁止法を考える」が行われた。五名のパネリストが、コーディネーター村田幸子NHK解説委員のもと、活発な論議が展開された。
参加者数は、300名に達したが、ここでは、第二部の論議の要点を紹介したい。

障害のある人とない人の「平等」とは?
障害のある人が「交通機関のバリアフリー化」を求めると、「なぜ障害者だけを優遇するのか」という声が上がる。しかし、本日の国際フォーラムの会場まで、障害のない人は自分の足だけで、何時間もかけて歩いて来たのか?そうではない。電車、あるいは自動車などを利用して来ているはずである。それができるのは、明治以来100年間もの鉄道や道路への膨大な投資によってできた社会資本を利用して来場しているのである。ところが、障害者は、この社会システムから、長年にわたって排除されてきたのである。このことは、「差別」であり、「平等」ではない。この東敏裕弁護士(自ら障害を持つ日弁連「障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する調査研究委員会」委員)の発言は、参加者300名の共感を呼んだ。

役に立たない「障害者基本法」
1993年に施行された日本の「障害者基本法」についても、各パネリストから、多くの問題点が指摘された。北野誠一桃山学院大学社会学部教授は、「基本法」は国や地方公共団体などに、福祉施策の充実を求めたもの。しかも、努力義務規定のみで、罰則規定がない。だから、障害者が訴訟を起こしても、ほとんど敗訴になってしまう。この現状を打開するためには、「差別」と「人権侵害」に関する“禁止法”を制定しないといけない、と「障害者基本法」の本質的な問題点を指摘した。

福島智東京大学先端科学技術研究センター・バリアフリ―部門助教授(盲ろう者として日本で始めて大学に入学)は、大学入学時に下宿探しで「拒否された」ことなどを紹介。平野みどり熊本県議会議員(脊髄腫瘍摘出手術後、車いす生活)は、県議会の採決時に、「挙手」はだめで、「起立」を車いすの人にも求める(平野議員は「無効票」になる)という県条例の問題点を訴えた。永六輔放送タレントは、「手話」に対する厚生労働省と文部科学省の対応の違いや、道路の「点字ブロック」が東日本と西日本で違っていることの問題点などを指摘した。

村田幸子コーディネーター(NHK解説委員)から、「障害者基本法の改正で対応したらどうか」という意見も聞かれるがと、この点についての意見を求められると、全員が日本での「障害者差別禁止法」の制定以外に選択肢がない、と強調した。

「障害者差別禁止法」で、何がどう変わるのか
日本で制定する障害者差別禁止法は、アメリカのADAの内容に準じた「障害のある日本人法」としてほしい。と、福島智助教授は、主張する。そして、その内容は、1.差別があったときに裁判で勝つことのできる根拠となるような法律にすべきだ、2.また、裁判で長々と争われる前に、障害者が委員に参加している「人権救済委員会(仮称)」のような機関を設けて、問題の早期解決に有効になるようにすべきだ、と意見を述べた。
また、これまでの社会は、「若い」、「健康な」、「男性」を想定した「速さ」と「強さ」を求めるものだった。しかし、これからは、「高齢者」や「障害者」を含めた多様性のある社会、カラフルな社会にすべきである。ゼロコンマ何秒の記録を争うオリンピックの100メートル競技ではなく、タイムを目標としたものでない、大人も子供も参加できる、ホノルルマラソンのような<「ゆったり」した「味わい」のある社会>にしていきたいものである、という発言があった。
北野誠一教授は、「本人中心の地域での自立生活を可能にする諸権利と権利擁護システム」全体を獲得するための「障害者差別禁止法」制定の必要性と、同時に、具体的に地域での生活を支援するシステムを確立するための「障害者総合支援サービス法」的な法律も必要だろう、と指摘した。そして、その場合、現行の障害者基本法を、このような法律に改めることも想定できるのではないか、という注目される発言を行った。


10月10日
「障害者差別禁止法」実現に向けて日弁連と意見交換会

NPO日本アビリティーズ協会・会議室にて、「JDA・全国ネットワーク」の主要メンバー(役員、顧問)7名と、日本弁護士連合会人権委員会・障害者差別禁止法調査研究委員会の委員(弁護士)2名との、意見交換会が開催された。約3時間に及ぶ意見交換会では、昨年11月にまとめられた日弁連の「障害のある人に対する差別を禁止する法律・要綱案(試案)」の内容を含めた、「障害者差別禁止法」に関連する障害当事者としての幅広い事項についての、実感と率直な意見が提示された。
初めての会合であったが、「障害者差別禁止法」制定に向けて(立法府:国会への働きかけを含む)、お互いに有益な内容となった。「JDA・全国ネットワーク」としては、今後も、日弁連を含む他の団体・関連組織、障害当事者団体などとの連携を、積極的に図っていくことにしている。また、多くの関係者が、個々の事情を超えて、「小異を捨てて大同につく」というスタンスで、「障害者差別禁止法」の成立に向けて結集していかなければならない、と考えている。

9月14日~15日
多摩NPOフォーラムで米国ADA担当弁護士が講演

「障害者差別禁止法」実現への潮流
■ADA実施10年でアメリカはどう変わったか

9月14日~15日、東京・多摩市公民館ベルブ永山ホールで、多摩NPOフォーラム(主催多摩市・多摩NPOセンター)が開催された。その初日の基調講演で、米国政府ADA監視業務担当弁護士ターナー・D・マデン氏が、ADA実施10年でアメリカで何が起こっているか、という注目される最新情報を語った。マデン氏は、元ソルトレイク・オリンピック委員会・ADAマネージャーであり、米国3500施設の監視を行なっているバリアフリー分野の専門家である。日本版ADAの実現を目指す関係者にとって、有益な講演だった。その要旨をご紹介したい。

「障害を持つアメリカ人法」(ADA)とは何か
ADAは、1990年7月、ブッシュ大統領(現大統領の父)の署名によって成立し、1992年から実施されている。丁度10年が経過したところである。ADA制定運動の発端は、1945年、ある車いすの身体障害者が、映画館に入ろうとして拒否され、裁判所に訴訟を起こしたが棄却されたことにある。そのことが障害を持つ人たちの怒りとなり、きっかけとなって、その後多くの人たちの参加によって、法律制定運動が展開されてきたものである。ADAは、人権法である。しかも、その適用において他の市民法と異なるところがある。この法律は、差別が意図的なものであるか否かを問わない、のである。あらゆる組織は、障害を持つ人たちに便宜を与えるために、確固たる措置をとらなければならない。
ADAでは、どのような人を障害者と見ているのか。ADAは、主要な生活上の活動に影響を及ぼす身体的ないしは精神的な障害を持つ人たちを「障害者」と定義づけている。この中には、車いすを必要とする明らかな障害、視覚・聴覚その他の身体的障害、さほどの障害とはみえない学習障害、精神障害、知能発達障害、さらに、HIV・結核・麻薬中毒、また場合によってはアルコール中毒などの、感染症や非伝染性疾患が含まれている。
ところで、ADAが1990年に合衆国連邦議会を通過したとき、この法令に何ができるのか、またこの法令がどう施行されるのか、知る人は誰もいなかった。当時私は、多くの事業経営者(例えばスタジアムを経営している人など)から、ADAの規定条項についての細かなコメントをするように依頼された。確かに、ADAの規定を読んだだけでは、分からない点がある。現在では、例えば連邦政府のアクセス委員会(「合衆国建築交通バリア準拠委員会」、22名で構成)によって作成されている規定の明細に関するルールでは、5ページの法律条文に対して「数千ページのルール集」が作成されているのである。ADAが発効した直後の数年後には、多くの会社、特に中小企業が、この法律を知らないため、あるいはお金がかかるからという理由からこの法律に準拠しなかったために、障害者個人からもアメリカ司法省からも、数多くの訴訟がなされることになった。

ADA10年目の課題
現在アメリカでは、ADA関連の訴訟が、年間約3500件に達している。原告側から見た勝訴、敗訴の正確なデータはない。より現実的な和解が多いからである。いずれにしても、この10年間で、ADAの制定によって多くの障害者の差別禁止と権利の確立に貢献してきたことは事実である。
ADA10年目を迎えた時点で、よりよく機能するような法令にするためには、いくつかの課題がある。私自身が深く関わっている「アクセス(建築・交通)分野」でいえば、次のような諸点があげられる。

1.建築物を新たに建設したり改造するに当たっては、その構造全体が当該地域の建築法とADAとの間に整合性があるように、一環とすべきである。連邦法のADAと州法の建築法の違いによって関係者が混乱している現実を解決すべきである。

2.「アクセス委員会」の委員に、障害を持たない実業界の代表も任命すべきである。そうすることによって、商業・ビジネス・小売業界などからの有効な情報を得ることができると思う。

3.個人が事業主を連邦裁判所に告訴する前に、事業主がADAへの違反事実を改めるための「60日間ないし90日間の通告期間もしくは猶予期間」を許可するように改めるべきである。そのほうが、効果的な問題解決になる可能性が高くなる。

4.弁護士の手数料には、15万ドルの上限を設けるべきである。このことによって、障害者のアクテビスト(運動家)が、法律が定める弁護士費用からの単なる金儲けのために、不真面目な告訴を起こさないようにすべきである。

ADAに盛り込まれている5つの項目

◇第Ⅰ項目―雇用
従業員数15人以上の企業の雇用主は、障害を持つ有資格者を差別することができない。雇用主は、適格な障害を持つ就職応募者や従業員に、妥当な(合理的な)便宜を与えなければならない。これには、過度の苦痛が生じないように、仕事場や装備を改造することも含まれている。ADAでは、雇用上のいかなる面でも、障害を持つ人たちへの差別を禁止している。この禁止事項には、雇用、解雇、報酬、職務や、雇用者の類別も、転勤・昇進・レイオフ(一時休職)・リコール(復職)も、求人広告も、退職手当や障害者休暇も、さらにその他の雇用上の諸条件も、すべて含まれている。

◇第Ⅱ項目―州および地域の公共サービス
州や地方の行政機関は、障害を持つことを理由に差別を行なうことができない。それぞれのサービスやプログラムは、総体的に見て、障害を持つ個人がいつでもアクセスでき、利用できるように運用されなければならない。これには、新たに建設されたり改造されたりする建築物・道路・歩道・交通施設などが含まれている。

◇第Ⅲ項目―民間企業が運営する施設・サービス
レストラン、ホテル、劇場、ショッピングセンター、モール(商店街)、小売店、美術館、博物館、図書館、駐車場、私立学校、デイケアセンター、その他類似の公共的施設の場においては、障害を持つことを理由に差別がなされてはならない。新たに建設される公共的施設や商業施設(商取引を行なう非居住目的の施設)の場は、アクセス可能なものにしなければならない。既存の公共的施設や商業施設の場の改造に当たっても、アクセスできるように建築しなければならない。例えば、公共的な集会施設(劇場、スポーツ施設など)では、座席の1%を車いす用のスペースに当てなければならない。同様に、同伴者の席も隣りあわせで1%の席を用意しなければならない。しかも、特定の一箇所に集めるのではなく、会場全体にバランスよく散在するように配置しなければいけないのである。また、車いすの人の席は、前の席の人が立ち上がったときでもその観客の上に視線が行くように「一段高い眺望」を確保するように、用意されなければならない、のである。
また、ADAでは、「補助手段」を用意することになっている。つまり、補聴器類、手話通訳者、奉仕的動物の便宜、字幕、特別な印刷物、その他の便宜などが義務付けられている。そして、「問題あり」というときは、各個人が司法長官に提訴することができるし、裁判所に告訴することもできる。これは、他の項目でも、同様である。

◇第Ⅳ項目―テレコミュニケーション(電話等の通信)
電話会社は、聴覚障害者や言語障害者のために、テレコミュニケーション伝達の24時間サービスを提供しなければならない。

◇第Ⅴ項目―雑則
「他の法律との関係」「報復と威圧の禁止」「技術援助」「紛争解決のための代替手段」等。




2002/08/31
伊東弘泰専務理事が「アジア太平洋障害者の十年記念フォーラム」で強調

訴訟の根拠法になる『障害者差別禁止法』が絶対必要!

8月31日、猛暑の中、全社協・灘尾ホール(東京、新霞が関ビル)に、車いすの障害当事者など約300名が参加して、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムが開催された。
「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」からは、伊東弘泰専務理事がパネリストとして参加、この課題にかける意欲と取り組み姿勢を訴えた。2時間半に及ぶフォーラム「障害者の権利法・差別禁止法に関わる取り組み」には、伊東専務理事を含め6名のパネリスト(各障害当事者団体の代表)が出席し、北野誠一桃山学院大学教授がコーディネーターとして、熱気のこもった議論のとりまとめを行なった。

「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」は、2001年の障害者の日である12月9日にスタートした組織である。その時点で、3年後の2004年12月9日までに「障害者差別禁止法」の制定・実現を図ることを目的として設立したものである。前身は、2001年4月に創設した「障害者福祉と介護保険制度・研究会」で、介護保険制度によって後退した障害者福祉の実態を是正することが目的であった。この研究会で介護保険制度の問題点を追及する過程で、「このままでは現実の諸課題を解決することは不可能である。抜本的な問題解決のためには、”日本版ADA”(障害者差別禁止法)を実現する道しかない」ということになった。障害当事者団体である社団法人全国脊髄損傷者連合会、NPO日本アビリティーズ協会、社団法人日本リウマチ友の会、NPO日本せきずい基金、日本ALS協会、全国頸髄損傷者連絡会、障害者の生活保障を要求する連絡協議会(障害連)の7団体で、スタートを切り、多くの団体の加入が続いている。

私自身が代表となっているNPO日本アビリティーズ協会は、1966年、障害者の働く場を作ることを目的に、「”保障”よりも働く”チャンス”を!」という綱領を掲げて、運動を展開してきている。私自身がポリオで、学卒時には、100社もの企業に就職試験受験の書類を送っても、すべてそのまま送り返されるという仕打ちを受けている。結局、障害者6名による株式会社日本アビリティーズ社を設立することになった。この障害者に対する「問答無用の雇用差別」は、許しがたいものだった。ここにおられる障害者の方々も、これまでの人生で、人に言えないような、いろいろな「差別や不遇」を体験していることと思う。このような思いを、再び自分の子供や孫たちにさせてはいけないと思う。

そのような障害者への差別を禁止して、障害者自身の正当な権利を確立するためには、現行の抜け穴だらけの「障害者基本法」ではなく、障害者の正当な権利が認められるような、いざというときには訴訟に耐えられる、判決の根拠規定となる、しっかりとした法律を制定する必要がある、と考えている。当ネットワークでは、障害当事者としてのこれまでの人生で遭遇してきたさまざまな喜び、悲しみ、思いをベースにした、この法律に託す、障害者としての”基本的な精神” ”哲学” ”理念”を、憲法でいえば「前文」に当たるところに、しっかりと書き込み、「人間としての”権利性”」を、確立していきたい、と考えている。また、この運動を推進するに当たっては、これまでの障害の種類や立場を超えて、共通の理念をつくる必要がある。また、私たちの主張が、社会全体に受け入れられるような内容でなければならない。場合によっては、これまで得てきた援助や恩典の一部を返上することもありうるという覚悟も必要になってくるだろう。私たちは、歴史的にも、革命的な「障害者差別禁止法」を制定しなければならないと思う。

この他、金政玉(DPI日本会議)、黒崎信幸(全日本ろうあ連盟)、時任基清(日本盲人会連合/日本あん摩マッサージ指圧師会)、江上義盛(全国精神障害者家族会連合会)、野沢和弘(全日本手をつなぐ育成会)の各氏が、各々の立場から「障害者差別禁止法」の制定の必要性についての発言があった。この内容については、今後の当会報にてご紹介していく。
最後に、コーディネーター役の北野誠一・桃山学院大学教授が、「この法律の制定は、障害当事者の自由権・社会権・生存権に関わる重大な課題である」ことを確認して、散会した。




7月16日
黒岩宇洋議員が参議院内閣委員会で迫る

「障害者差別禁止法」の早期制定を!

さる7月16日、午前10時に開会された参議院内閣委員会において、黒岩宇洋議員(無所属)が、福田康夫官房長官に対し、日本でも「障害者差別禁止法」の早期制定を行なうべきである、という注目すべき質問を行なった。なお、黒岩議員は、4月に行なわれた参議院補欠選挙(新潟選挙区)で選出されたばかりの若手(35歳)一年生議員ながら、障害者福祉問題に強い関心を寄せている。当日の委員会では、平成15年度からスタートする「新障害者基本計画」(10ヵ年)ならびに「障害者プラン」(5ヵ年)への鋭い問題指摘と具体策についての質問も展開しており、「JDA・全国ネットワーク」としても、今後の活躍に期待を寄せている。ちなみに、黒岩議員は、「JDA・全国ネットワーク」の構成メンバーである日本アビリティーズ社の元社員でもある。
以下、当日の参議院内閣委員会での質疑応答の状況を紹介する。

黒岩議員
わが国では、1993年に障害者基本法が施行されている。しかし、これは、あくまでも基本法であり、国や地方公共団体等の施策の努力目標を定めたにすぎない。つまり、法規範性はあっても、裁判規範性がない。すなわち、障害者基本法では、裁判が起こせないことになっている。また、昨年8月31日、国連の国際人権規約委員会は、わが国に対して、「障害のある人に対する差別規定を撤廃し、あらゆる種類の差別を禁止する法律を制定するように」という勧告を行なっている。福田官房長官自身が主宰している「新しい障害者基本計画に関する懇談会」でも、複数のメンバーから、「新しい障害者基本計画に、障害者差別禁止法を制定することを盛り込むべきである」という要望が出ている。福田官房長官は、障害者の具体的権利を定め、差別の禁止や権利侵害からの救済手続きを明記し、障害者差別が政治部門ではなく、裁判所で救済されるという、「障害者差別禁止法を制定すること」を、「新しい障害者基本計画」に盛り込むつもりがあるのか。私は、このことを「新しい障害者基本計画」に是非入れてもらいたい、と考えている。

福田官房長官
障害者などに対する不当な差別的取扱いの禁止については、今国会に提出した「人権擁護法案」で手当てしているが、さらに米国のように、障害者に対する雇用や種々のサービス提供における差別についての救済措置として、一般企業や事業者に特別の賠償責任などを認める仕組みをわが国にも導入することについては、検討すべき課題が多いと、考えている。いずれにしても、障害者の権利を尊重し、社会活動への参加機会を確保するため、さまざまな制度を見直すこと、これは絶えず進めていく必要がある、と考えている。

黒岩議員
アメリカのADAやイギリスのDDAに比べると、今回の人権擁護法案で障害者が救済されるとは全く考えられない。しっかりとした、「障害者差別禁止法」を制定することを、重ねてお願いしたい。

「障害者差別禁止法」の制定に関する国会での論議は、これまで極めて低調だった。最近二年間の状況では、2001年3月の衆議院予算委員会、同年5月の衆議院厚生労働委員会、2002年2月の衆議院内閣委員会で、いずれも民主党の議員が、「人種差別問題」、「ハンセン病問題」、「障害者プランの推進状況」などの関連で、「障害者差別禁止法」の制定をついでに要請しているというスタイルが多かった。しかし、今回の黒岩議員の参議院内閣委員会での質問は、「障害者差別禁止法」の制定にベクトルを絞った内容であり、障害当事者団体としては、心強い論議の展開だった。



2002/06/21
介護保険の見直しを!坂口厚生労働大臣に要望書を提出

日本アビリティーズ協会をはじめとした障害者団体で構成されている「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」では、去る6月21日、「介護保険制度の見直しに関する要望書」を坂口厚生労働大臣に提出しました。

「JDA・全国ネットワーク」荻野昭二会長(社団法人全国脊髄損傷者連合会・理事)が、冒頭に、「障害者の立場から、介護保険施行後の実態を踏まえて、多くの問題点を整理し、6項目に絞って”見直しに関する要望書”をまとめたものである」ことを強調した後、「要望事項」の各項目を読み上げました。
その後の坂口大臣との主な応答内容は、以下のとおりでした。

荻野会長
障害者は、65歳になると、通常の高齢者として介護保険が適用される取り扱いとなり、これまでの障害者としての固有の立場や事情が無視されています。

坂口大臣
65歳で障害者福祉のサービスを切ることが悪い、ということですか。

荻野会長
そのとおり。現在の介護保険制度の運用では、障害者の自立が損なわれる。障害者の生活の自立支援という側面が薄くなっている。「介護保険優先」という考え方をはずして、障害者については、従来の「障害者福祉」のサービスをそのまま継続してもらいたいのです。

坂口大臣
現在、障害者の待遇についての見直しを行なっているところです。保険制度で対応する場合と、税金(一般会計)で対応する場合では、障害者にとってプラス、マイナス両面があります。一般会計での対応では、どうしても規制的な部分が強くなるし、一長一短があります。

荻野会長
しかし、全身障害者、頚椎損傷者や四肢麻痺の人の場合は、24時間介護でないと生きていけない、という実態があります。パーソナルアシスタントなど、全生活24時間をサポートするような支援者の仕組みを作ってもらいたいのです。

新田輝一JDA常務理事
私は横浜市に住んでいますが、65歳以上の障害者が障害者福祉の窓口に行くと、老人福祉(介護保険)の窓口に行ってくれといわれます。ところが、そこでは、障害者福祉のことは全くわからない、という実態があります。

坂口大臣
障害者福祉と介護保険の問題は、今後整理していきます。ただ、24時間全身介護のような場合は、施設に入っていただいて対応せざるをえないでしょう。

荻野会長
それは困ります。在宅で生活していくことが、大原則です。

坂口大臣
しかし、ある程度自力で、家族の支えも含めてでないと、(福祉施策によって)在宅で24時間カバーしていけるかどうか。

荻野会長
現実に、そのことをやっている市町村があります。

坂口大臣
それはあるでしょうが、すべての市町村でというわけにはいかないでしょう。老人福祉と介護保険との関係もあるので、そう簡単にはいかないですよ。

荻野会長
いや、東京の自治体で、ある脊髄損傷の人が、一日三交代・11人で支えるという完全サービスを受けて生活している例があります。

坂口大臣
やれる地方自治体もあるでしょうが、国全体としては難しいことです。

熊本雄治JDA常務理事
第一項目の「介護保険優先」に関して、市町村の現場で現実に起こっている問題は、「何が何でも介護保険優先である」ということで、「障害者施策が抑えられていること」です。

坂口大臣
それは分かります。

熊本常務
「原則として介護保険優先」となっていますが、では、「原則外とは何か」です。障害者については、「介護保険優先となっているにもかかわらず、次のようなサービスは適用可能である」というような形に改めてもらいたいのです。

坂口大臣
要するに、第一項目の趣旨は、「高齢者介護優先になっているので、障害者のことをしっかりと考えてくれ」ということですね。

荻野会長
そのとおりです。

熊本常務
次に、「要望書」の第二項目のことですが、ホームヘルパーが痰の吸引を行なうことが「医療行為だからだめだ」となっていますが、医療行為の解釈の幅が広く取られ過ぎています。昨日(6月20日)付けの東京新聞の投書欄への投稿によると、車いすの障害者が転倒して腰を強く打ったのでヘルパーさんに湿布を張ってほしいと頼んだら、「湿布を張るのも医療行為だからだめだ」と断られたというのです。これは極端な例かもしれないが、「痰の吸引」は重大なことです。身体介護のヘルパーが、体位変換やタッピング(手の平を丸めてたたく)などによって痰が出やすくする行為をやっていますが、その結果痰がのど元まで上がってきたところで「痰の吸引は医療行為だからできません」という状況になっているのです。これは、全く非現実的です。現行法の運用では、ヘルパーのやる行為が、あまりにも狭められているのです。

坂口大臣
なるほど。

熊本常務
昨今クローズアップされている救急救命士の気道確保のための緊急対応の問題とあわせて、「必要な訓練・研修を受けたヘルパーにはこのような行為を認める」など、前向きに検討してほしい。

坂口大臣
そこのところは、今考えているところです。

荻野会長
第三項目以降も、重要です。第四項目の福祉用具では、介護保険のレンタルの補装具が体に合わず、体を壊してしまうこともあります。是非従来の個別対応のオーダーメイドにしてほしい。住宅改修も障害者の生活自立支援のために増額してもらいたい。

坂口大臣
第六項目まで全部となるとなかなか大変ですが、この中でやらなければならない基本的なことは、できるだけ早くやりたい。障害者福祉と高齢者介護との関連もふまえて、早く決着をつけるようにしたい。ご要望のことは、よく分かりました。

「JDA・全国ネットワーク」では、これからも本来の目的である、「障害を持つ人に対する差別を禁止する法律」の制定と同時に、その時々の課題・問題点等も研究し、改善のための運動を行なってまいります。



■2002年1月15日(火) 
第2回「役員会兼常任理事会」開催

於・NPO日本アビリティーズ協会・会議室


◆出席者
会長、専務理事、常務理事、理事、顧問など10名。

◆検討・決定事項等
1)会運営の基本方針についての追加検討。
2)新会員候補に対する「呼び掛け」方法を含む、基本的な準備活動に関する追加検討。
3)「JDA原案」の作成という第1目的以外にも、直面している「支援費制度」問題、「介護保険制見直し」問題にも取り組むこと。
4)「支援費制度」問題については、大濱常務理事を中心にして対策を検討する。1月27日(日)に、「勉強・検討会」を行い、厚生労働省の審議会(同委員である妻屋常務理事に当会の意向を踏まえて、強く要望をしてもらうこと)向けに、「要望メモ」作成すること。1月29日(火)の審議会で実行。
5)「介護保険制度見直し」問題についても、新田常務理事を委員長とレ、堺園子先生を顧問として、「厚生労働大臣向けの要望書」を、3月末までに作成すること。
6)また、緊急テーマである、障害者団体の活動に多大なる影響を与える「低料第三種郵便物制度の存続問題」に関して、至急片山総務大臣へ「要望書」を提出すること。2月6日(水)に実行。